右記のグラフは過去27年間、世界の株式と債券に半分ずつ積立投資した場合、積立投資期間に沿って変化する年率リターンのブレ幅を示したグラフです。
もちろん損をする年も儲かる年もあるわけですから、いつ積立投資を始めるかによってリターンは変わってくるはずです。
上の線は最高に運よくリターンの高い時に積立投資した場合のリターンを示しています。
グラフの左端を見ると、最初の「1年積立投資」はうまくいけば40%利益を上げられますが、運が悪いと10%以上のマイナスを出してしまっています。
要は積立投資する投資によって予想される収益の幅が広すぎるため、リスクが高くなっています。しかし、積立投資期間が長くなると、最初は大きく離れていた最高リターンと最低リターンの幅がどんどん狭くなっていくのが分かるでしょうか?
これは長く積立投資を続けていると、運がよい年と悪い年の差がなくなって、平均に近づいていくことを示しています。
7年以上の積立投資期間だと最悪のケースでも0%を超えています。
これは元本と同額ということで、どんなに運の悪い人でも7年以上積立投資し続ければ元本割れしなくなったということを表しています。
20年以上の長期積立投資なら最低でも年率6%程度のリターンが出ています。
ようは、最もツイていない人でも長く積立投資を続けていれば、否が応でも利益が上がり、損をすることが出来なくなってしまったのです。
このことから、長期積立投資は損をするのが非常に難しい運用法といえます。
ですから、積立投資は最低でも5年、できれば10年は使う予定のないお金で行えばリスクを減らすことができます。
一時的にマイナスになることはあっても、積立投資では最終的に安定した収益が期待できるからです。
10年間取り崩せない定期預金だとでも思って、余裕を持って見守ることが積立投資には大切なのです。
右記の図は過去208年間のニューヨーク株式市場の毎年の平均リターンを調べ積み重ねたものです。
下の目盛りは年率リターンで、例えば右端は70と80の目盛りの間に「1843」「1814」のふたつの数字がありますが、
これはこの年にはたった1年で株価が70%以上急上昇したことを示しています。
逆に、左端にも「1931」「1807」とありますが、この年には1年で40%も急落したということになります。
ようはニューヨークの株式市場に投資すると、いい時には70%も儲かって、悪い時には40%も損をしたというわけです。
ものすごいバラツキですね、この差をみると、株式投資は相当リスクが高いように思えます。
でも、これらは極端な例にすぎず、実際は図を見れば分かるように、多くは0~10%の間に集中しています。
次に多いのは、10~20%、その次に多いのは20~30%で4番目に多いのが、0~マイナス10%になります。
数字が得意な人ならお気づきかもしれませんが、この形はまさに定規分布のカーブと似ています。
定規分布とは左右対称のカーブを描く分布で、一番高い場所が平均になるということです。
株式市場のリターンがこの定規分布に従うと仮定すれば、0~10%の年利回りが平均ということになります。
実際、この208年間のデータを分析すると年平均利回りは約8.63%になっています。
「長期積立投資をしていれば年率8%程度の利回りは期待できる」と言っているのはこの数字も根拠のひとつになっています。
毎年8%のリターンを達成し続けられれば上々なのですが、そうはいかないのが資産運用の世界、これは積立投資でも同じです。
平均すれば8%でも、実際にはもっと大きく利益が作れる年もあれば、損を出してしまう年も積立投資にはあります。
先ほどの表の左右の目盛りを見ると208年間で最もラッキーな年には1年間で株価が80%近く上昇し、もっとも不運な年には株価が半分近くになったということが分かります。
それでも全体を平均すれば、積立投資であれば結局は8%に落ち着くわけです。
さらにこのデータを分析すると、208年のうち151年は上昇していることが分かりました。
ようは、全体の4分の3が上昇しているので、ならして考えれば3年上昇して1年下落する、ということになります。
ですから、たまたまマイナスの年に積立投資を始めればすぐに損を出してしまうし、たまたまマイナス幅が大きい時期にあたってしまえばやっぱり大きく損をします。
それでも、平均すればだいたい8%程度の利回りは積立投資で見込めることは過去のデータが証明しています。
2~3年の短い運用だと平均値とかけ離れた数字になることがありますが、長く続ければ続けるほど平均値に近い収益が積立投資で期待できるわけです。株式、債券などの証券市場は短期的な上下動はあっても、長期的に見れば右肩上がりになることを世界の株式市場の歴史が教えてくれます。
将来も絶対にそうなるとは断言できない部分は否めませんが、資本主義に乗っ取って人間が暮らしをより良くしようと経済活動をしていれば市場という物は自然と成長するものです。
ちなみにアメリカ株式市場は1792年にニューヨーク証券取引所が開設されて以来、208年間で約3000万倍の伸びを示していて、これはインフレ率を遥かに上回る数字です。
こうした市場に投資すれば短期的に損をすることがあっても長期で積立投資することで必ず利益を出せるようになっているのです。
しかし残念ながら、10年積立投資し続ければ平均8%のリターンが見込めるというのも、100%保証されている話しではありません。過去の歴史をさかのぼると、世界の株式市場で10年投資して報われなかった例が二つだけあるのです。
ひとつは1929年のニューヨーク、ウォール街の株式市場大暴落に端を発した世界恐慌、そしてもうひとつが日本のバブル崩壊です。おどろおどろしいことを最後に書いてしまいましたが、積立投資に対して極端に悲観的だったり、極端に楽観的になったりしないでくださいということが言いたいんです。皆さんは驚くかもしれませんが、バブル最高値の1989年12月から日本株に毎月一定額の積立投資をしていれば、2008年5月の時点で利益を出すことに成功しているのですから。